2024-10

一日一言

愚者に勝る愚

謗(そし)る人の言を聞いて、自分の悪しきを覚らば、大の拾ひものをしたるに同じ。若し謗る人の言が更に我れに当て嵌らぬなら、云う当人の愚なるを露はすものなれば、愚者を相手にするは愚者にまさるの愚なり。何んぞ彼れの不足を憫(あわ)れまざる。 わが...
一日一言

無意識の徳

徳は知らざるに行ふを上とす、徳と知りてするを中とす、努めてするは下。徳を行うて誇れば最早徳にあらず。忠孝も貞操も苦みて尽すは、尽さざるには勝れども、無意識にも尽すを以て至高とす。 うつるとは月も思はずうつすとは 水も思はぬ広沢の池 主に忠親...
一日一言

要は平生にあり

平生道を踏まざる人は、事に臨みて狼狽し、処分に苦しむものなり。倒せば、出火の時・平生処分あるものは、動揺せずして取仕末も能く出来るべしと雖も、平生処分なきものは、唯狼狽して措く所を知らざるに至る。左れば平生道を踏み居るものに非らざれば、事に...
一日一言

平素の修養

泥棒を捕へて縄綯(な)ふは愚の至とは知れど、その実誰人も為すことにして、不時の事件に遭遇して慌てぬものは甚だ少い。人の平常の修養を試すのはこんな時である。 何事も定業なりといふ人も まことの時は驚きぞする 世の常に工夫観念つとめなば まこと...
一日一言

生も死も道の為

安政六年(西紀一八五九年)の今日、橋本左内、頼三樹(頼 三樹三郎)等が勤王論を唱へて刑せられた。彼れの頃の天下の志士は、私心更になく、ただ主義の為に立ち、生くるも死するも道の為と心得たれば、死するも更に天をも人をも恨まぬ。権力にあり付かうと...
一日一言

甘き舌

世辞よき人は気に入るもの。英雄も任人の為には欺かれる。篤と考へざれば、甘(うま)き舌には巻かれ易い。人の言を疑ふはよからざれども、言語に誠あるやなきやの判断はなくて叶はず。 くきの葉の露も光のあればとて 玉といひては如何が拾はん へんくつな...
一日一言

勤めざれば知り難し

知る事は易く、行ふことは難し。然れども委しく知らざねば行ふべからず。たとへば農業のごとき、時をたがへず蒔き、草かり、土かへぱよくみのることは誰も知れど、唯その事を知りて、せざれば益なし。又其知るにも時を考へ、培(つち)のかひやう、鋤(す)き...
一日一言

君子は下問を恥ぢず

自信は貴けれども、他人を馬鹿と做し、己のみ賢しと思ふは精神上少しく足らざる証拠なり。智者は何人よりも学ぶ所あつて人を愚弄せず。 智恵ありと思へるちゑにさへられて あはれ誠のちゑを失ふ 恐ろしき鞍馬愛宕の天狗より なほ恐ろしき里の小てんぐ一日...
一日一言

一筋に心定めよ

我が身が辛いと欺く時は、他の人も皆それぞれ身の辛きを欺き居ることを忘るべからず。天は、決して我れにのみ苦を与ふるにあらず、我れに当る風は人にも当り、我が身を濡(むら)す雨は他の身をも濡すなり。一筋にこゝろ定めよ浜千鳥 いづくの浦も波風ぞ立つ...
一日一言

愛の根元親子の愛

安政二年(西紀一八五五年)の今日江戸に大地震があり、其の節、藤田東湖は母を救はんとして却て自ら圧死した。親を思ふ子の心にまさるは、子を思ふ親の心なりとやら、相互の思ひやりありてこそ、人の万物の霊長たる実が見ゆるなれ、親子の愛は人類の愛の根元...