一日一言

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一筋に心定めよ

我が身が辛いと欺く時は、他の人も皆それぞれ身の辛きを欺き居ることを忘るべからず。天は、決して我れにのみ苦を与ふるにあらず、我れに当る風は人にも当り、我が身を濡(むら)す雨は他の身をも濡すなり。一筋にこゝろ定めよ浜千鳥 いづくの浦も波風ぞ立つ...
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愛の根元親子の愛

安政二年(西紀一八五五年)の今日江戸に大地震があり、其の節、藤田東湖は母を救はんとして却て自ら圧死した。親を思ふ子の心にまさるは、子を思ふ親の心なりとやら、相互の思ひやりありてこそ、人の万物の霊長たる実が見ゆるなれ、親子の愛は人類の愛の根元...
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銭遣い

天保六年(西紀一八三五年)の今日天保銭が鋳造され、明治三十年(西紀一八九七年)の今日金貨本位制実施さる。金銭に淡泊なるは誰人も誉むれど、人より強請(ゆす)り取りたる金は湯水の如く用ゐても誉むるに足らず、額に汗して得たる金なりとて、義理まで欠...
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光陰矢の如し

光陰矢の如し、昨日まで青々と見たる田の色も、今日は全く色変り、山の木の葉も風に乱れて、世は方(まさ)に秋の景色となつた。それにつけても、世の有様はさて置き、わが知人の小さい範囲にも、数へ挙ぐれば変化は少くない。昨日見し人はと問へぱ今日はなし...
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倹約の仕方

気長く心穏にして、万に倹約を用て金を備ふべし、倹約の仕万は不自由なるを忍ぶにあり、此世に客に来たと思へば何の苦もなし、朝タの食事うまからずともほめて食ふべし、元来客の身なれば好嫌は申されまじ、今日の行(おこなひ)おくり、子孫兄弟に能く挨拶を...
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寛宏なれ

我れに害を加ふるものあるとも寛大に容(ゆる)せ。我れもし彼れの身であつたなら、定めしもつと害を加へたであらうと想ひやれば、彼の力の少きは本不憫に思はるる。我れ彼れの企てし程の害を蒙らざるに、彼れこそ自ら重傷を負ひしもの。月はその光を覆はんと...
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徳の競争

商売にせよ、学問にせよ、勤務(つとめ)にせよ、互に競ふて進むに就け、負けるは甚(はなはだ)無念なれども、正道を踏み行く点に就ては敢て人後に落ちぬと自覚さへあれば、負けても口惜しくもなく恥ずかしくもないし。明治天皇御製並び行く人にはよしや後(...
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災の導火線

小さいからとて侮る勿れ。微菌ほど小さきものなけれど、大なる人間を死に至らしめ、獅子も身中の虫の為に斃る。あれは子どもだ、これは高の知れたる女どもだ等と軽んじて、我が儘勝手をするは後日の災の導火線。 小敵よ弱敵よとて油断すな あなどる故に落(...
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発芽も収穫も天意

事の成る成らぬは天に任し、自分は偏(ひとえ)に其日其日の務を全うすれば足る。其の結果が思ふ通りに行かずとも、之れ必ずしも失敗でない。植うる種子は一月で生ゆるもあり、百年後に芽(めざ)すもある。人生は限りなきの播種(たねまき)なり、発芽も収穫...
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天を相手にせよ

明治十年(西紀一八七七年)の今日西郷南洲翁が城山に戦歿した。曾て(かつて)翁の言に曰く、道は天地自然の道にして、人は之を行ふものなり、故に天を敬するを以て目的となす。天は人も我も同一に愛す、故に我を愛する心を以て人を愛すべし。人を相手にせず...