奇々妙々の世の中

一日一言(新渡戸稲造)

私の尊敬している教育者の一人である新渡戸稲造先生。
有名なのは著書『武士道』、国際連盟事務次長、東京女子大学初代学長という経歴はご存じのことと思われる。
また、今回のお札改定変更で同じ教育者の津田梅子氏へと交代したが日本銀行券の五千円券の肖像としても知られているはず。

この人が自分の助となつた格言を集めて、その日その日の教訓になる格言を日本人が理解できるように、また、簡単な文章で一日の精神的糧になるようにと書き残したのがこの文書である。ただ、1915年(大正4年)の脱稿なので、また、文語文の形態から令和のZ世代人は理解できるかなは甚だ疑問であるが…

もう一つの特徴としては一日分を声高らかに誦(しょう)しても一分以上を要しない短文であるということ。
あなたも私のブログを見ながら音読してみませんか?

今日の糧を得られるかもわかりませんよ。

十月二十日【奇々妙々の世の中】

今日は恵比須講とて商売繁昌を祝ふ日。何業によらず業務の隆盛の基は勉強なりとは、安政三年(西紀一八五六年)の今日死去したる二宮尊徳翁の教なり。
杣(そま)が深山に入つて木を伐(き)るは、材木が好きにて伐るにあらず。炭焼が炭を焼くも、炭が好きにて焼くにあらず。夫(そ)れ杣も炭焼も、其の職業をさへ勉強すれば、白米も自然と山に登り、海の魚も里の野菜も、酒も油も皆自から山に登るなり。奇々妙々の世の中なり。 (二宮尊徳)
※「杣」とは人が木を利用するために手入れしている森林のこと